そのまま月を仰いでいたら、ゆっくりと足音が近付いてきた。



 月見を邪魔されたみたいで少し腹が立ったが、やはり、目は向けなかった。



 が、その足音は途中で止まった。


 やっと先客に気付いたかと横目で見ると―――――



「……優子さん…」




 50メートル程先に、月を仰ぎ見ている彼女の横顔があった。




 彼女は海の時と同じ、一人で静かに一点を見つめていた。