愛する人。






『蓮、たまには遊びに来い。

 家じゃなくても、外でもいいんだから。
 たまには兄弟で呑もう』



 ……本当にこの人は。



「もちろん、兄貴の奢りだろ?」


『ふっ いいよ。

 可愛い弟に美味しいもの食わせてやるよ』



 そう言った兄さんを、後ろの方で呼ぶ声がした。


 それに気づいたのか、慌てて『また連絡する』と電話を切られた。





 そのまま窓に目を向けると、空は茜色に染まっていた。


 こうやって、知らないうちに季節は巡り、俺の心を置き去りに進んでいくのだと思ったら、少し安心した――…。