愛する人。





 差し出した手を、戸惑いながらも握ってきた彼女を抱き締めたくて。


 引き寄せたい気持ちをグッと堪えて手を握り返すと、2人、静かに出口まで向かった。




「結構ゆっくり見てたんですね。

 夕食、どうしましょうか」



 駐車場まで歩いてると、辺りは薄暗くなっていた。



「私は何でもいいけど……家帰って何か作ろうか?」


 優子さんは俺の顔を覗き込むように見ると、恐る恐る聞いてきた。



「じゃあ、一緒に作りましょうか」



 俺の言葉に、一瞬で笑顔になった彼女。


 その姿に、今まで我慢していたものが溢れて、気付けば。



「きゃっ……」


 道の真ん中で、額にキスをしてしまった。