愛する人。





「……蓮、くん…?」


 私の呼び声にやっと気づいたのか、思い切り私に視線を向けた。



「――優子さんは大丈夫だった?」


 一瞬の間が嘘のように彼は私を抱き締めて、いつものように優しく聞いてきた。



「大丈夫。

 心配させてごめんなさい…」



 私がソッと手を回すと、


「良かった…」


 そう呟いて、私にゆっくりとキスを落とした。






 そのまま社長室に戻り、蓮くんは書類をバックに仕舞うと、私の手を引いて部屋を後にした。