愛する人。





 目の前には、さっき紅茶をくれた女性。


 その手元には、新しい紅茶が入っていたであろうカップがなぎ倒されていた。



「ご、ごめんなさい!」


 慌ててカップを戻すけど、湯気が出た紅茶がガラステーブルに広がっていく。




「いえ、申し訳ありません。

 そのままにして下さい。今すぐ片付けます」


 彼女は淡々と言うと、スタスタ歩いて部屋を出た。
 そしてすぐ戻ってくると、無駄のない動きでテーブルの上を片づけ始めた。




「……あ…」



 テーブルを片付ける彼女の右手が赤い。