愛する人。





「――分かった」



 蓮くんも書類を見終わったような素振りで、立ち上がる。

 あんな分厚い書類……嘘でしょ…!



 目を見開いてソファーに座る私に、


「優子さん、すぐ終わらせるので待ってて下さい」


 ニッコリ笑ってそのまま社長室を出て行った。




「はぁ…疲れたぁ……」


 ――と、思ったら……


ガチャ

「ひゃっ」


 深く溜め息を吐いた瞬間、また扉の音。

 慌ててドアを見ると、蓮くんがスタスタ私に向かって来て、アッという間に隣に腰掛けた。



「えっ 蓮くん?」

「忘れ物」