愛する人。





「サイズ合って良かった」


 エンジンをかけてハンドルに手をかけながらふわりと笑った彼。

 私は小さな声で、ありがとうと伝えた。





 車を走らせてる中、私は未だに往生際の悪い事を考えていた。


 蓮くんの会社には、正直行きたくない。

 なぜなら、何度か頼まれて書類を届けた事があるけど、受付の女性や他の部署の女性達が私を睨みつけて陰口を叩くから。


 今日もきっとその洗礼を受けるはず。……蓮くんから離れた瞬間。



「はぁ…」


 運転席にいる蓮くんには気付かれないように、小さく息を吐いた。