愛する人。





「……あれ?怒ったの?
 優子さん?」


 一向に返事もしない私の顔をのぞき込んでくるけど……それでも、私の視線は流しの食器達。



 洗い物が終わり濡れた手を布巾で拭き、そのまま彼の前を通り過ぎようとしたけど……


「どこに行くの?」



 静かに佇んでいた彼に、瞬時に手首を掴まれてしまった。



「洗濯回すの」


 ブスッとしながら答える私に、またもや吹き出しながら


「――そんな事よりも」


 そう言って、私の手を引いて行く。