愛する人。






 ……あの時だ。



 裕太のお母さんが泣いて病室に帰ってきた、あの時…。





 私は震え始めた手を、ギュッと握った。




「彼とお母さんを呼び出して、その説明をしたわ。

 ……蓮にも。

 彼らが居なくなってから蓮に泣かれて大変だったわ。私と櫂で慰めて、なだめて……」




 私の耳にはもう。

 お母さんの声は届いていない。






 ――裕太。裕太、裕太!


 何度呼んでも『アナタ』はいない。