愛する人。






『……はい、九条です』

「先ほどは失礼しました。
 篠田 優子です」


『……蓮は寝たのね?

 話があるなら、明日、病院にいらっしゃい』


 まるでかけてくる事など始めから分かってたような口振りに、私は、ただ「はい」と言った。






 電話を切り、深くソファーに腰掛ける。



 これからどうなるかは分からない。

 ……でも。
 私達の溝は、確かにある。


 どんなに愛し合っていても埋まらない溝。

 それが、埋まるなら。



 ……なんて。私は安易に考えていた。


 心の傷は見えずらくなっただけで確かにそこにあるのに――