愛する人。






「美也子、さっきから何を……」

「――優子さん」



 お父さんの質問を遮って、お母さんが私を、その鋭い瞳で見つめ、


「全てを知りたくなったら、私を訪ねていらっしゃい」





「―――! 母さん!」

「蓮……人の心の痛みは消えないのよ。

 ……癒えたように、見えるだけ」





 真っ直ぐな瞳で言い切ったお母さんに、彼はそれ以上、何も言わなかった。




 蓮くんが私に秘密がある。

 それは……私に関する事で。



 あの海での出会いが、初めてではなかったって事…?