愛する人。






 笑った瞳は髪と同じ、漆黒の切れ長目。

 色豊かな紅色の唇が印象的な、笑顔のキレイな女性がこちらに向かってきた。




「気の利かない人達でごめんなさいね?

 立ち話も何ですから、どうぞお掛けになって?」



 その黒い瞳に、吸い込まれそうになる―――…。









 蓮くんの鋭く射抜く瞳は、お母さん似だ。


 瞳の色が違うだけで、柔らかい笑みにもかかわらず人を従わせる。

 そんな力を持つ瞳。



 でも……。


 蓮くんでも、お母さんの漆黒の瞳には勝てない。