――忘れた訳じゃない。
裕太を思い出さない訳じゃない。
ただ、静かな、穏やかな気持ちでいられないの。
これは『彼』への裏切りなのか。
「優ちゃんお待たせ」
仕事を定時で上がり、この会社を紹介してくれた石塚さんと近くのデパートへ向かう。
「どんなのがいいですかね?」
「う〜ん……女性が喜ぶものは俺には分からないからなぁ。
やっぱり優ちゃんが良いと思う物で…」
デパートの一階。婦人物のアクセサリーの場所で二人で探す。
夏だから涼しげなネックレスとピアスのセットとか……かなぁ。
手に取り自分にあてながら二人で悩む。
「石塚さんの好みはどんな感じですか?
やっぱり石塚さん好みの物がいいです」
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