愛する人。





「……蓮」

「今は何も聞くな」



 部屋に帰ると彼女の香りが残ってるようで、吐き気がする。




「――くそっ!」

ダンッ



 壁を殴った所でスッキリするわけじゃない。
 そんなの分かってる。

 でも……彼女が居なくなった理由も俺を拒絶した理由も分からない。


 だって、彼女は確かに俺を受け入れたんだ。


 確かに……。






「……蓮…」


 海斗の声に振り返ると。

 いつものひょうひょうとしてる海斗の顔はそこに無く、眉間にシワを寄せて苦悶してる奴の顔があった。



「……蓮。
 もう彼女の事は忘れろ」