愛する人。



 それは雪の降る、クリスマス・イブの事。


 ************



「ねぇ、優子……」

「ん?」



 クリスマス位は二人で過ごしなさいと、毎日病院に来てた彼のお母さんが私に言ってくれて。

 今日は久しぶりの二人きり。



 私は有給全てを使い、1ヶ月の休みを貰った。

 彼は婚約者と言ってあるし、事情は昔から話してあったので、会社も快く許してくれた。


 彼はもう、体力の限界にきていて。起きあがる事も出来ない。



「……こっちに、おい、で」



 弱々しく。

 それでもいつものように微笑んで、私を呼ぶ。


 ……でも。

 その手はもう、手招きをしない。