姉さんの死をたった一年ぽっちで忘れられてたまるものか?
「悪いけど、峰宮君。私は后子の死を思い出したくないの、それに…」
彼女が何かを言いかけようとしたとき、保健室のドアが開かれ、先程の疲れきった顔をした少年が現れた。
「あら、おかえりセナ」
先生は少年に近づくと、彼女の間をすり抜けるようにして、ぬいぐるみの元まで歩く。
「まったく」
小声でつぶやいたそのこえは俺は聞こえたが、彼女の耳には入っていなかった。
「セナ!帰ったらまずすることがあるでしょ?」
彼女が叱咤すると、少年は小声で
「ただいま…」
と言って、彼女に抱擁した。
それから手を洗ってうがいをしていた。
「彼は…」
俺がそういうと先生は言った。
「あの子が私の姪よ」

