その後は、何においても上の空。


俺にしては珍しいと、各担当教科の先生に言われ、保健室に叩き込まれた。



「はい、今日はどうした?」


緩く髪を一つに束ねている女医の神崎先生は向かい合うように座りながら聞いた。




「いえ、なんか連れて来られました。」


俺はそういうと、先生の後ろに置かれている白いウサギのぬいぐるみが目に入った。



それに気がついたのか、先生は言った。



「あれは、あたしの姪のものなの。今は私が預かっているのよ」



「なぜ、そんな話を?」


「あなたが、ぬいぐるみを不思議そうに見たからかしら?」



「さしずめ、あなたは、峰宮后子のことで悩んでいるのかしら?」



ギクッ



「先生は知っているんですか?」




「ええ、知っているわ。なんせ私の大切な友人の一人ですもの」



「え?」



「后子と私は同級生で、いいライバルだったわ」



「なら、姉さんが死んだときも知っているんですね!?」



「どうかしら?あまり覚えていないわ」



「先生は友人の死をすぐに忘れる事が出来るんですか?」


俺は言う。