口を開けて唖然とする彼女。

もちろん冗談だけど。
まぁ、もういいや。はやく帰ろう。




『嘘だよ。もういいから、帰らし……』

「いいよ」



『えっ!?』




まさか本気で返されるとは思ってなかった。




「そのかわりあたしに溺れても知らないわよ?」




先ほどの可愛い表情からは伺えないほどの強い目で、俺を見る。

不思議とその目に吸い込まれそうになる。



『ふーん。強気なこと言っちゃってていいんだ。あんたの方こそ知らないよ?』




そういいながら、彼女の手をとった。




『行こっか』




いいよ、帰ってゲームするのは諦めよう。

今日はこの強気な彼女をどれだけ落とせるか……
面白いゲームになりそうだな。






2人は手をとり歩き出す。

再び向かうのは夜の街。




まだ名前も知らない。

でも俺はもうこの時点で、君に溺れていたのかもしれない。









‐最悪な出会い‐

(運命だとは気づかずに)