夕方の浜風に髪をなびかせ、両腕を軽く組み、木製の柵へ軽く持たれかかった姿勢で、海を見つめたまま彼女は小さく唇を動かした。 声をかけてしまった手前、会話を途切れさせたくないという思いで、何か云わなきゃと焦れば焦るほど逆に言葉が出てこない。 仕方なく僕は、彼女の右隣1メートルの位置で、彼女と同じ姿勢で同じように海を眺め始めた。