‘サァ━━━━…………’

「………う……あ………はぁ………。」
今日もまた。
日常と化したように、人が死んでいく。
「華澄、行くよ。」
母親は、それを見てみぬフリをする。
「うん。」
あたしも何も無かったかの様に死体の横を通る。
この島は、いつからこうなってしまったんだろう。
道はゴミ箱から溢れたゴミで埋め尽くされ。
空き地は死体で埋まる。
キツい臭いにはもう慣れた。
皆、職もなく他の島からネットを通じて、自宅まで輸送される冷凍食品を食べる。
道で寝ている他人は頭を潰される。
この島で産まれ、育ってきた。
もう何年も、青い空や海は見ていない。
それどころか人の笑顔さえも忘れた。

人々の目は皆虚ろになり、足元がふらついている。

‘ガチャ’

家は鍵をしたって物を盗まれるから、何も置いていない。
「華澄、もう寝な。」
母親の言葉からすると今日は夕食が無いようだ。
「………ん…………」
とりあえず、硬く冷たいコンクリートの壁に腰を掛、眠ろうとした。
「華澄、お前は幸せだね。」
母親はいきなり変な事を言う。
「お前は、こんな島で、‘華澄’なんて綺麗な名を持って。一度はお前をフィクティシャス島に連れて行きたいねぇ。」
フィクティシャス島。
架空の島だ。