10年前。
「お兄ちゃん、見てみて!」
我が家では頭領の子供だからって絶対に忍者にならなければいけないわけではなかった。
でも、あたしは忍術を使うのが楽しかった。
「チカゲはすごいなあ。」
「へへっ!」
たしか、このときは影分身をやってたんだと思う。
パートナーをもらえるのは7歳になってから。
あと1年、と楽しみにしていた記憶もある。
このころ、あたしはまだ眼帯をしていなかった。
右目を見ておびえる人もいなかった。
「お兄ちゃん、誰か来る。」
「・・・え?」
「ぼーっとするな、長男!」
叫んだのはお兄ちゃんのパートナーだった。
「逃げるぞ。末っ子、お前もだ。」
彼はあたしを抱きかかえた。

