溢れそうになる涙を。 必死で押し戻す。 泣いちゃだめ。 静かに。美しく。 去ると決めたのだから。 二人の間に、少しの沈黙。 彼のため息が、大きく響く。 「なんでそうなるんだよ」 「……え?」 予想していなかった台詞に、私は首を傾げる。 「だからさ俺、どうしてもお前のことが好きなんだよ。だから、このまま自然消滅だけはしたくない」 そう言って私を捕らえる、漆黒の瞳。