「なに?倦怠期ってやつ?」


ユイが私の方を振り返り、小声で耳打ちをしてきた。


すぐさま視線を彼から目の前の彼女に移す。


「……そ、そうなのかな」


私も自然と小声になり、なるべく彼を見ないように心がけた。


とは言うものの。


視界の端に映る彼を、排除することはできない。


知らず知らずのうちに、瞳は彼を追っている。


「最近、全然一緒にいないよね。普通にさぁ話しかけたらいいじゃん」


ユイが心配そうに言う。


わかってる。


わかってるんだけど、それができない。


怖い。


近づけば、今にも切れてしまいそうなこの関係が。


泡沫のように、パチンと消えてしまいそうで。


あとには何も残らない。


元から何も、そこには無かったみたいに。