鬱(うつ)は必ず治るのだから

夜になるとぐったりと疲れ果て、もう起きていられないと、妻は子供より早く寝るようになった。

けれど夜中に目が覚めてしまい、パソコンに向かう。
日中は何もやる気が起きないと、昼寝をしている。
人と関わりたくないからと電話にも出なくなった。

はた目には「だらしない、甘えている」そう映るかもしれない。
事実、私もそう思っていた。
それだけではない。
子供の保育園のお迎えの時刻などの、決め事の時間が迫ってくると緊張し、心臓がバクバクしてくるという。

スーパーやレンタルビデオ店、賑やかで音楽が鳴り響いている場所も同じように、鼓動は早くなり、息切れがしてくる。

うつ病のほかに、妻にはもう一つ「パニック障害」という病名がくわわった。


季節は秋から冬に変わっていた。
2003年という年が変わろうとしていた。
街の楽しげな年末の喧騒とは正反対に、家の中には笑いが消え、妻の罵声と子供の悲鳴が交錯していた。

食卓で顔を覆った妻が、疲れた声でぽつり呟いた。


「死にたい、楽になりたい」