「わざわざ手当してくれてありがとう。私、すぐこけるから。えへへ」
…それ笑い事じゃないし。
   私は黙りこくる。
「……」
沈黙が流れる。沈黙を切ったのは彼女。
「ねぇ、少しお話ししよう。」
「…(うなずく)」
あぁ、どうして私はうなずくことしかできないのだろう。
「私の名前はリア。あなたは?」
「…ない。あっ、0・17(ゼロ・ジュウナナ)が私の名前。」
「え!?…じゃぁ、私が名前。つけてあげる。」
「いらない。私の名前なんか呼んでくれる人いないから。」
初めてこんなに長く喋った。
「いーの。私がたくさん呼ぶから。」
彼女…リアは「うーん、何にしよう」って言いながら考えてる。
「あ!そうだマリアは?」
「!そんな、聖母マリア様のお名前なんて!」
「…うーん、合ってると思うんだけど。」
「違う名前が良いです。」
「そうだな。じゃぁ、リリィは?」
…り、り、ぃ?…私の名前はリリィ?
「…いい、かも、です。」
「よし!決定!貴方の名前はリリィ。」
「り、り、ぃ」
「そう、リリィ。」
少し納得はいかないけど、意外と嬉しかった。
「ねぇ、リリィ、貴方を私が買って良い?」
確かに今のご主人様は厳しい…。
もしリアに買ってもらえたなら…。
ダメ。リアは一番美しいのに私みたいな人といたら評判が落ちちゃう。
それだけは、絶対にダメ。
「だ…め…」
「え?なんで?」
「貴方の評価が落ちちゃう。」
「私の評価?どんな?」
「街で一番美しくて、誰にも優しくて友達はいっぱい、いて…次の女王候補。っていう」
「え?そんなの知らないよ。それに友達いっぱいてことはないし、女王にもならない。
それに、リリィも十分かわいいし、優しいでしょ。」
「でも!、私は奴隷よ。」
「身分?」
「そう。」
「そんなの知らないわよ」