誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




「緒方さん!」

『ぁ、水川さん!』

「聞いた?」

『はい、今、届けようと――』

「ありがとう。」

『あっ…』


緒方さんが持っていた紙を奪うように取った私は、すぐに診療室に戻る。


ガラッ

『遅い!』

「すみません!高梨賢吾くん、5歳、血液型はO、熱は38度3分。アレルギーは特になしとのことです。」

『了解…。』


南先生が聴診器で賢吾くんの心臓とお腹にあてて音を確かめる。


『賢吾くん、ここ痛いかなー?』

『うっ…!』

『水川、足!』

「はい!」


賢吾くんの無意識に動く足を固定して、意識を集中させる。