誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




「先生、私、患者さんのところへ行ってきます。」

『OK。桜木、カルテ!』

『はい!』


車いすを取って、診療室から出て、患者の元へ。


「こんばんは。」

『看護婦さん…!この子を…!』

「はい、お預かりしま――」

『あゆ、みん…?』

「え?あ……」

『あゆみん!』

「…新、様……」


患者を抱いた母親の横にいたのは――…新様。

どうして…、


『賢吾っ!』

「!」

『っ……』


母親の悲鳴めいた声で我に返る。

今は仕事中。

仕事に集中しろ、私。