誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




神様って、つくづく意地悪だと思う。

私が勇気が持てなくて会いに行けないからって、こんな形で、会わせることないじゃない。

こんな、形で――…


―――それは夜の8時30分。

夕方、杏ちゃんにまた新様について相談していたら、呼び出しがかかってしまった。

理由は、外来に熱を出して運ばれた子が点滴を嫌がってるのでやる気にさせてほしいとのことだった。

それからその子を点滴させて、そしたらまた患者さんが来て…

代わる代わるやってくる仕事に追われて気付けばこんな時間。

外来も一安心して、婦長にも帰っていいと指示をもらっていた時――


『すみません!この子、熱が――!!』


また、病にかかったお子さんがやってきた。


『…ごめんなさい、貴女には、もうちょっとここにいてもらうことになりそう。』

「はい、私、南先生の補助に回ります。」

『よろしく頼むわ、水川さん。』


婦長はこれからリーダー会議で留守になる。

後は夜勤の看護師が3人、準夜勤が2人、それぞれ今は自分の持ち場をやってる。

私しかいない。

そんな時、準夜勤の一人が持ち場から帰ってきて、手伝ってもらうことになり、患者の元へ向かった。