誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『会いに行けばいいじゃん、その…何とかさんにさ。』

「あーらーたーさーま!いい加減覚えてよ、杏ちゃん。」

『様付けなんてよくもまぁ…。』

「何か!?」

『……いーえ。何でも?』


この1週間で、杏ちゃんとはとても仲良くなった。

今じゃ、私の方が年上なのに、杏ちゃんがお姉ちゃんみたいになってるくらい。

だから、杏ちゃんは私のことを何でも知ってる。

勿論、新様のことも…ね。


「はぁ…だって、理由もなく会いに行くのもさぁ、」

『メールとかは?』

「知りません!(泣)ねぇ、杏ちゃん、それわざと言ってる!?私が傷つくの知ってて!」

『…ごめんって。お願いだから、ヒステリックになるのだけはやめて。医者呼ぶよ。』

「うっ……」


私にとって、「医者呼ぶよ」は「警察呼ぶよ」と言われるのに値する。

しかも、本を読みながら言われるってのがいじらしい…。


この1週間で、杏ちゃんがどれほどクールかっていうのを思い知らされた。

そう簡単には笑顔見せないし、人の話はほとんどスルーだし。

聞いていたとしても内容は右から左に筒抜け。

しかも思ったことはズバズバ言うもんだから、こっちのダメージ増大!

……でも、それが的を突いてるからついつい話しちゃうんだよねぇ…。