誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




それから3日、5日、1週間、と時は過ぎ行くけれど――…


「おはよう、杏ちゃん。」

『………』


杏ちゃんは口を閉ざしたまま、一言も喋らなかった。

1週間も経つのに、未だに私は杏ちゃんの言葉を聞いたことがない。

ずっと心を閉ざしてる。


いつも、窓のそとを見ている杏ちゃん。

貴女は一体、何を見ているの?


「…本、もう読んだの?」

『…………』


それでも、杏ちゃんは窓の外を見るだけじゃない。

杏ちゃんは、読書が好きらしい。

お昼に杏ちゃんを訪ねると、いつも杏ちゃんは本を読んでいた。


難しそうな、哲学書。

高校生にはとうてい似合わない本を、杏ちゃんは涼しい顔をして読んでいた。