誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




気付けば4時。

そろそろ夜勤の時間帯。


杏ちゃんが無事移動したことも婦長に報告しないといけない。



「……また帰る時に来るね。」


何も反応しない杏ちゃんに笑顔を向けて、私はゆっくりと杏ちゃんの病室を後にした。


―――――…

――「杏ちゃんの移動、無事終わりました。」

『お疲れ様、水川さん。長かったわね?』



ナースステーションに戻ると、婦長しかいなかった。


「はい、まぁ…。すみません、」

『いいのよ、別に。水川さんにはメンタルケアをお願いしてるわけだし。…それで、どう?杏ちゃんは。』

「思ったより…心閉ざしてて。時間はかかるかもしれませんが…メンタルケア、頑張ります。」

『そう…まぁ、地道にね。』

「はい、じゃぁ、回診に行ってきます。」

『ぇえ。』


そうして、私はまたナースステーションをあとにした。