誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




――「ふぅ……」


急患の受け入れで慌しい救命センターにて杏ちゃんと初めて出会い、まず小児科の病室まで杏ちゃんを連れて来た。

さっきから何も言わず、ベッドで寝ている。

目も合わせてくれない…。


子どもなのに、表情が冷たい――…。


「杏ちゃん、はじめまして。今日から杏ちゃんの専属看護師になりました、水川愛実です。よろしくね。」

『…………』


まず手始めに、自己紹介をした。

でも、杏ちゃんはこちらを見向きもしなかった…。

ずっと、窓の外を眺めていて――…


動揺した。

こんな無表情で、何も語ろうとしない子なんて、初めてだったから…。


杏ちゃんは、一体何を思ってるんだろう…?


私と杏ちゃんの間に流れる沈黙は、なんだか冷たいように感じた。