誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『遅れましてすみません!!』


それから10分後。

救命チームにいる後藤先生と…皐月が走ってやってきた。



『急患かい?』

『ぇえ、さっきまで火災で全身火傷を負った患者を――…。ぁ、それで、杏ちゃんのことなんですが、』

『あ、はい。』

『ぇえっ…と……、カルテの記載意外には特にありません。ただ、彼女は精神が不安定なようで…』

『あの年頃は尚更、そうだよな。…よろしく頼むよ、水川さん。』

「あっ、はい!」



いきなり話を振られて少し焦る。


『ぁあ、君が子どもたちのメンタルケアがピカイチだっていう…噂は聞いてるよ。この、井坂さんから。』

「ぃ、いえ……」


一瞬、皐月と目があって呆れ顔を見せた。

皐月はゴメンゴメンと苦笑い。

もうっ…皐月ってば、
調子良いんだから。