誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『やってくれるわよね?』

「っ…はい、分かりました。」

『悪いわね。』

「いえ……」



まぁ、確かに。

唯でさえ手一杯な状況に、また患者さんが増えるっていうのはキツいけど……


心を閉ざしてる子どもを目の前にして、放ってはおけない。


『じゃぁ、1時30分から引き継ぎがあるから。場所は、いつもの…分かるわよね?』

「はい、大丈夫です。」


婦長が言ってるのは、救命センターと小児科をつなぐ通路のところ。


『これは、杏ちゃんのカルテ。引き継ぎの前に読んでおいて。主治医は林田先生だから。』

「はい。」


カルテを受け取ると、私は席についた。

林田先生か……

林田先生は、リハビリ方面専門の先生。

子どもに優しい、良い先生だ。


もうすぐ昼食の時間なので、私は子どもたちの昼食を取りに厨房に向かった。