誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




「んむぅ…っ?」

『なっ…酒くさ!何本飲んでんの!』

「きゃきゅちぇりゅにゃにゃぁ~!」

『呂律回ってないし…。』


目の前にいるのが新様なんて、今の私には理解できていない。


『ほら、あゆみん!家に帰るよ!もう飲んじゃダメ!』

「んやぁーっ!にょみゅぅーーっ!」

『だーめ!』

「んにゃっ!」

『だめ!』

「んにゃぁあーーっ!」


お母さんと小さな子供のやりとりみたいだった。

缶チューハイ2本を2人で取り合う。


「おにーしゃんのしぇちぃ!」

『ケチで良いから!もういいや、俺の家行くよ!ほら立って!』

「んにゃっ…!?」


強い力で引っ張られて、バランスを崩した私は新様の胸元に倒れる。


『――っとと、大丈夫?あゆみん。』

「ん…おにーしゃん、こーしゅい…おにゃもの…おねぇ…?」

『え?』


鼻を掠める女物の香水のにおいに、今、私を介抱しているのはオネェだと勘違いする。


「だんしぇいが…しゅきなのれすかぁ…?」

『……はぁ?』


そう言って、私は意識を手放し、新様は?マークを浮かばせていた。