誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『…もう日も暮れちゃったね。』

「グズッ…ホントだぁ…っ」

『クスッ…何でまた泣いてるの(笑)』

「だぁって…裕南がそんなこと言うからぁーっ」

『何よー。クスクス』


泣いてる私と、笑ってる裕南。

なんて奇妙な光景だろう。

日も沈んで、外は真っ暗。


『ねぇ、愛実の成長祝いに、乾杯しようよ!』

「なっ…!成長って…!」


言い方が悪いよ、もう…。

不貞腐れる私を、裕南がまた笑う。


『良いじゃん!今日くらいさ!バーに行こうよっ!』

「でも、裕南、旦那さんのことは…?いいの?」


明るく言う裕南に私は不安が募る。

裕南が結婚する前はいつでも、どこでも、いつまでだって飲んでたけど、

でも今は、そんなこと出来ない。

裕南には新しい家庭があって、一番大切にしなきゃいけないものだと思うから。


『大丈夫!愛実が電話してきたときに、もう旦那さんには言ったもーん♪今日は遅くなるって☆』

「そうなの!?」

『そっ!だから行こ行こ!今日は、飲むぞー!!』


何故かハイテンションな裕南に引っ張られながら、私はファミレスを後にした。