誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―



『それで?』

「え?」


何?

それでって?


『お礼はしたの?』

「うっ……」

『まだなんだ。』

「だってー…」


はぁ、とまた溜め息をつく皐月。

私は基本、皐月に怒られっぱなしだ。


『もう…分かってるだろうけど、お礼は早めにね。後回しにしてたらだめだよ?』

「わっ…分かってるよ!」


それくらい、分かってるもん。

そんなに、私非常識ってわけじゃない…と思うし。


『それと、“重い”って思われないよーに!忘れちゃだめだよ!?自分がしてる行動に、ちゃんとこれで良いかって考えてから行動してね!』

「はい…。」


そういや、そんなこと、リョウくんと付き合う前にも言われたっけ…。

全然忘れてたけど。


『よし。じゃぁ、今日はゆっくりとお礼は何にするか考えてね。あたしはもう帰るから。……もう限界なの。』


大きなあくびをする皐月。


「ぁあっ…ごめんね!?全然気付かなくてっ…」

『良いわよ。じゃぁ、お会計出しといて?そのお詫びに。じゃね。』


手をひらひらとさせながら、そうやって皐月は帰って行った。