誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―



「ふ、フられて、雨の中ブランコに座ってた私に、“どうしたの”って、声掛けてくれて、傘も傾けてもらって……、」

『それで、恋に落ちちゃったんだ?』


恥ずかしくて、返事は首を縦に振るだけだった。


『ふーん…確かに、愛実が恋に落ちるのも分かるわ。愛実って、優しくしてもらったことないもんね。とくに男から。』

「っ……」


ズバスバと、私が気にしていることを言い放つ皐月。

皐月のバカ…。

そんなに言わなくたっていいじゃない。


『それじゃ、その男物の服も、その優しい彼のモノ?』

「ぅん……。」

『あんたまさか、会ってすぐの男に、身体を許すなんてこと――…ッ』


んなっ…!!


「しっ、しないよっ!皐月のバカ!」

『ははっ…だよねー、ガードだけは固いもんね、あんた。どうせリョウとも一回もヤッたことないいんでしょ?』

「っっ……」


そんな、そんなことっ…

こんな公共の場で言えるわけないでしょっ…!?

ちょっとはそれくらい考えてよ!


『図星ねー。ま、未だに処女だもんね、愛実は。』

「ちょっ…!」


そんなことまで!

もうっ…恥ずかしすぎてここにいたくないよー…