――『愛実!』
「!」
病院を出ると、呼ばれた私の名前。
誰だろうと振り向くと、そこにいたのは…、
「皐月(サツキ)…?」
『よっ!どうしたの?こんな時間に。早退したの?』
片手を上げて笑顔で近寄って来たのは、看護学校で知り合って親友である、井坂 皐月。
今は同じ市立病院で、皐月は救急救命センターに勤めている敏腕看護師だ。
実技でいつも首位だった皐月には適切な科である。
「ううん。今日は休み。だけど、子供たちの検査とか注射で駆り出されてたの。」
『ぁあねぇー…。愛実は昔っから、何故か子供に好かれる体質だったからねー…要するに、子供たちのお守り役ね。』
「まぁ、そうだけど……、」
体質って表現、どうなの?
「皐月の方こそ、今帰り?」
『そうよー?本当はあたし、今日は明けだったんだけど、急患が3人来ちゃってさぁー。やっと一息つけたから、今帰りなんだ。』
「そっか…。相変わらず大変だね、救命センターも。」
『まぁねー。ね、それよりどっか店行かない?ここにいるとセンターに逆戻りさせられちゃう。』
「うん、そだね。」
救命救急センターに患者が尽きることはない。
いつもベッドは満床。
運ばれてくる頻度も多いため、長居するだけ帰れなくなる。
それを恐れて、皐月は早く病院から立ち去りたいのだろう。
私達はまず、近くのファミレスに行くことにした。

