――『お疲れ様、水川さん。』
仕事…というか子供たちの付き添いが終わり、帰ろうとした私を引き止めたのは婦長だった。
『秀人くんと佳菜子ちゃんの付き添いを頼んだだけなのに、結局あなたをこんな時間まで働かせてしまって、』
「い、いえっ…!私は子供たちの笑顔が見れればそれでいいんです。気にしないでください、婦長。」
時刻は午後3時。
秀人くんと佳菜子ちゃんの付き添いが終わり帰ろうとした時、女の子の大きな鳴き声が聞こえ、診療室を覗くと、大切な予防注射をしようとしているところで女の子が怖がって大泣きしていた状況だった。
そこで駆り出されたのは私。
それからは外来で子供たちの遊び相手にされて、今に至るのである。
『本当にあなた、向いてるわね、この仕事…。』
「ぇ?あ、ありがとうございます。」
婦長の言った意味が分からなく手首を傾げながらもお礼をした。
『明日は早番ね。今日のことが理由で遅刻なんて許しませんよ。じゃ、気をつけて帰って。』
「は、はいっ、失礼します!」
去っていく婦長にお辞儀をして、私は小児科病棟を出た。

