誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




あれから10分経つが、あゆみんは来ない。


『すみません。面会時間はもう過ぎておりますので…。』

「あ…、はい。」


ナースさんからそう言われ、なくなく立ち上がった。


「すみません、」

『はい?』

「…水川愛実さんに、玄関先で待ってるって、伝えてもらえませんか?」

『分かりました。…お大事に。』


“お大事に”…?

ぁあ、俺を患者の家族の誰かと勘違いしてるんだな。

ぁあ、勘違いと言えば―…あゆみんが、俺と姉さんの関係を勘違いしたことがあったな、と前に会った時のことを思い出して、少し笑いながら、俺は病院を出たのだった。