誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『ぁ、新様、ごめんなさ――』

『だれ?こいつ。』


“こいつ”…?

本当に殴ろうかと思った。

いくらなんでも、俺は年上だぞ?

何で5歳もいってなさそうな子どもに嘗められてるんだ?俺は。


『っ、秀人くんっ!年上の人には“こいつ”なんて使わないで?』

『…ごめんなさーい…、』

『すみません、』

「いや、いいんだ。」


そうは言っても、俺はひきつく笑顔しかできなかった。

地味にへこむんですけど。

でもまぁ…あゆみんが叱ってくれたから…良いか。

なんて、単純すぎる俺。


『すみません、あの、私――…、』

「いいよ。待ってるから。」

『……はい。』


あゆみんは俺に先に帰ってほしいようだったが、俺はそれを牽制した。

ここまで待ったんだ。

ここで帰るなんてことはしたくない。

ひでとくんを連れていくあゆみんを見ながら、俺はそう思っていた。