誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




さっきまで診察を待っていたあの廊下に俺はまた来ていた。

あゆみんはどこに…――?


まだ彼女が帰っていないことを願いながら、俺はあたりを見回した。

すると――


ガラッ

「・・・!!」


俺の待ちわびていた人、あゆみんが診察室から出て来た。


『……!』

「あゆみん…、」


回れ右をしたあゆみんの前にさっと俺は現れる。

俺の突然の登場に驚いたのか、あゆみんは目を開かせていた。


「ちょっと、いい?」

『…はい――』


それだけで十分だった。

あゆみんは、何故か神妙な顔つきで俺の後をついて来てくれた。