誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『…賢吾、大丈夫?』

『ママ…。』


優梨子さんは母親の顔で賢吾のそばについている。

・・・俺はもうここにいるべきじゃないな。

もうすぐ8時30分。

直に蒼も来るだろう。


「…賢吾、」

『新兄ちゃん…。』

「しっかり休めよ。」

『うん。』


賢吾の笑顔を見て、安心する。

とにかく、良かった。


「じゃぁ、優梨子さん、俺はこれで。」

『あっ、滝さん…本当に、ありがとうございました…!』

「いいえ、…じゃぁまたな、賢吾。」

『バイバイッ…!』


親子2人に見送られて、俺は病室から出た。

さて、行くか。

彼女の元へ。

…話さなければならないことは、たくさんある。