誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『賢吾くん、これから終わるまで、腕を動かさないでね。動かしちゃうと、またお注射することになっちゃうぞー』

『…いいもん。お姉ちゃんがしてくれるもん。』

『クスッ…残念。お姉ちゃんはこれからお家に帰るのです!』

『ぇえー!?』

『だから、お静かに、安静にね、賢吾くん。』

『……うん。』

『良い子。じゃ、また明日ね。…お大事に。』


今日初めて賢吾に会ったはずなのに、あんなにも賢吾は心を開いてる。

いや…あゆみんが開かせたんだ。

無理矢理じゃなく、自然に。


こんなあゆみんの長所を目の前にして俺は、


『お姉ちゃん、名前は?』

『……水川 愛実。愛実姉ちゃんって呼んでね。』

『うん!おやすみなさい!あゆみねぇちゃん!』

『おやすみ、賢吾くん。』


もうあゆみんを自分の手で手に入れたいと――強く思った。

そばにいてくれるだけで、なんてことじゃもう俺は満足できない。

あゆみんを…俺のモノにしたい。

こんな独占欲…俺にもあったんだな。


病室から出て行くあゆみんを見ながら、俺はあゆみんに告白しようと思った。