誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




1、2分後、白衣を着た男性が診療室から出て来た。

…きっと、賢吾を診察した先生。


『こんばんは。』

『先生っ…!賢吾はっ!?』

『お母さん、落ち着いてください。』


優梨子さんは、先生からも同じことを言われ、泣きそうになっている。

いや、元々泣きそうにはしていたんだけど。


『お子さんは…賢吾くんは、ノロウイルスと言うものにかかっています。』

「ノロウイルス…?って――!」

『ぇえ、食中毒。ということです。』

『そ、そんなっ…!?』


最早、優梨子さんは泣き崩れそうな勢いだった。

それを、なんとかナースさんが支えてくれている。

まさか、食中毒なんて…。

風邪かインフルだろうと思っていた俺は、食中毒と聞いて茫然とした。