誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




『…っ、看護師さん!賢吾はっ…賢吾は大丈夫なんでしょうか!?』


次の瞬間、あの優梨子さんがナースさんに詰め寄っていた。


「ちょっ、」

『お母さん、落ち着いてください!』

『っ……!!』


さすがはナースさん。

精神が不安定な患者の家族の対応も手慣れている。


『賢吾くんはきっと大丈夫です。先ほども、賢吾くんは自分の名前を言えていましたし、現在、ウチの優秀な医師と看護師が診察しています。お母さんが今するべきことは、泣き叫ぶことでも取り乱すことでもなく、息子さんを、賢吾くんを…信じることなんじゃないでしょうか?…気を確かに持ってください、お母さん。』

『っ……』


ナースさんの言葉が効いたのか、優梨子さんはさっきの剣幕が嘘のように、近くにあった長椅子に座った。

ふぅ…。

そう、一安心着いた時、


ガラッ

また、診療室のドアが開かれた。


『ぁ、水川さん!診察終わりましたか?』

「ぇえ。」


出て来たのは、あゆみん。

あゆみんは先ほどと同様、走ってきた。