行ってしまった…。
もっと仕事を熱心に取り組んでいるあゆみんを見ていたかったけど、そんな我が儘、いくらなんでも不謹慎すぎる。
『お子さんのお名前は?』
『高梨…賢吾です…。』
『いくつですか?』
今は何より、賢吾の治療が最優先。
賢吾の詳細を聞くナースを眺めながら、俺は賢吾の病気について早く診断してほしいと思っていた。
ガラッ
「緒方さん!」
『ぁ、水川さん!』
すると、診療室からあゆみんが走ってやってきた。
さっき診療室に入ったばかりなのに…
「聞いた?」
『はい、今、届けようと――』
「ありがとう。」
『あっ…』
優梨子さんに話を聞きながらメモを取っていたナースからそのメモを奪い取るようにして、またあゆみんは診療室の中へ消えて行った。

