誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




「…蒼。」

『あ?』

「やっと、俺も前に進める気がするよ。」

『……!!――ぁあ、そうみたいだな…。』


君は分かっているのだろうか。

俺が君の涙を拭うその理由を。

君にだけ見せる表情も、感情も。

――…君はきっと、何も分かってはいないんだろう。


『新兄ちゃん、ゲーム!しよっ!!』

「お、この前の続きか?いいぞ~!今度は絶対負けないかんな!」

『え~!?』


それでもいい。

気付いてもらえなくても、ただ君が俺のそばにいてくれれば、それでいい。

俺たちはまだ、お互いのことを知っていないけど。

でもいつかは、お互いがお互いを想い合う日が来ると信じて、

…俺は今日も、今を過ごしていく。