誘い月 ―I・ZA・NA・I・DU・KI―




―新 Side―


『ん……』


鼻を掠める香ばしい匂い。

あれ…?今何時だ?

狭いソファの中で寝がえり一つ。

ゆっくりと、俺は瞼を上げる。


『………』


すると、小さく見える人のシルエット。

あれは…――


『ぁゆみ…?』


俺の起きてすぐの声は思ったよりも掠れていた。

ぁあ、そうか。

昨日、愛実はここに泊まったんだっけ…。

俺が目を覚ましたことには全く気付かずに、何やら料理をしている愛実。

冴えない脳内で、あれは昨日のことを思い出していた。